高齢化社会の日本で今後ますます対策が必要になる「フレイル」とは?

最近よく耳にする「フレイル」をご存じでしょうか?最近でもTV番組で医師が渡井にしていたので記憶に残っている方もいるかもしれません。

「フレイル」とは日本老年医学会が提唱した用語です。

「『加齢に伴う予備能力低下のため、ストレスに対する回復力が低下した状態』を表す“frailty”の日本語訳として日本老年医学会が提唱した用語である。 出典:厚生労働省「高齢者の特性を踏まえた保健事業 ガイドライン」

つまり、フレイルは「健康」と「要介護」の中間の段階であり、身体的脆弱性・精神心理的脆弱性・社会的脆弱性といった問題を抱えている状態のことを言います

日本の高齢化社会における実態

令和2年のデータによると、日本では現在65歳以上の高齢者は3,619万人で、総人口の約28.8%です。しかし、総人口が減少する現状に対して、令和18年になるとこれが約33.3%にまで増えて、3人の内1人が65歳以上の高齢者となることが推測されています。

また、平均寿命が延びているのに対し、健康寿命は男性で約9年、女性で約13年も平均寿命より短いというデータがあります。これは、男性が平均9年間、女性は13年間要介護状態だということにもなります。

中でも75歳以上の後期高齢者における要介護の原因の1位は老衰(フレイル)で、健康寿命をいかに延伸するかということから、フレイルに注目が集まっているのです。

内閣府「令和3年版高齢社会白書(全体版)」より参考

フレイルの3つの要素

フレイルは身体的要素精神的要素社会的要素の3つの要素で構成されます。

フレイルに至る最も大きな原因の一つがサルコペニア(加齢や病気による筋肉量の減少、全身の筋力低下に伴う身体機能低下の状態)やロコモティブシンドローム(運動器の障害による移動機能の低下状態)などの身体的な変化ですが、

それ以外にも、気力の低下うつ認知症などの精神的な変化や孤独、閉じこもりなどの社会的変化による影響もあります。

現在、フレイルの判断基準は世界各国さまざまですが、「国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター フレイル研究部 フレイル予防医学研究室」が日本人の高齢者に合ったフレイル評価(J-CHS基準)指標を発表していますのでセルフチェックをしてみましょう(東京大学高齢社会総合研究機構の発表より)

表 改定日本語版CHS基準(改定J-CHS基準)
項目 評価基準
体重減少 6ヶ月で、2kg以上の(意図しない)体重減少(基本チェックリスト#11)
筋力低下 握力:男性<28kg、女性<18kg
疲労感 (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする(基本リスト#25)
歩行速度 通常歩行速度<1.0m/秒
身体活動 ①軽い運動・体操をしていますか?
②定期的な運動
上記の2つのいずれも「週に1回もしていない」と回答
3項目以上に該当:フレイル 1-2項目に該当:プレフレイル 該当なし:ロバスト(健常)
出典:国立長寿医療研究センター「日本版CHS基準(J-CHS基準)によるフレイル評価」

チェックの結果はどうでしたか?つぎに、健康長寿に向けてフレイル予防のための3つの柱を紹介します。

① 栄養(食/口腔機能)

日常からバランスの良い食事をとることを常に心がけましょう。とくに、加齢とともに食が細くなってしまった時こそ、体を維持するために必要な栄養素の摂取に気を付けましょう

なかでも筋肉をつくるタンパク質と骨の健康のためのビタミンDは取るようにしましょう。

また、「オーラルフレイル」という言葉がありますが、これは、口腔機能の軽微な低下や食の偏りなどを含み、身体の衰え(フレイル)の一つです

東京都健康長寿医療センター 平野浩彦 作図参考

口腔機能の低下や、食べる機能の障害は最終的に心身の健康にも影響しますので、健康な口腔機能を保つために、定期的に歯医者さんを受診することも大切です。

② 身体活動

歳を取ると筋力機能が低下します。筋肉の衰えを避けるためには日常から適度な運動習慣を続けることがおすすめです

新型コロナウイルス感染症が蔓延して、家にいる時間が増えましたが、この先もまだまだ「WITHコロナ」の状態がしばらく続くでしょう。

健康管理のために、少し頑張って体を動かす習慣を身につけましょう。お散歩や、体操、自分でできる簡単な筋トレもおすすめです

③ 社会参加

人とのつながりが減ると認知機能が著しく低下するリスクがあります。コロナの影響で、外出するチャンスが減りましたが、こういう時こそ心理的健康のために、一人で閉じこもらないことが大切です。

感染対策を十分に行い、前向きに社会参加することが大切です。まずはお友達と一緒に美味しいものを食べに行くのはいかがでしょうか

東京大学高齢社会総合研究機構が発表を参考

高齢者社会の現在において、今後フレイル予防が非常に大きな社会課題となります。

現在は、新型コロナウイルス感染拡大により外出などの対策をしづらい環境にありますが、こういった環境のせいで活動が減少し、運動不足によるフレイルの悪化が心配されることから、今できることを行い、心と身体の元気を守りましょう

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